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(2)小型肝細胞
(2)-5 組織化と毛細胆管形成

小型肝細胞が成熟化し、類肝組織を形成する時、肝細胞索を模倣するような構造をとる。 索状構造の細胞間にみられる白い線状の構造は毛細胆管と考えられ、肝細胞から胆汁が排泄される機序と同様な働きを培養皿上で行い、また収縮と拡張を繰り返す運動をすることで内容物を一方向に輸送している。

盛り上がり組織化した部分には、毛細胆管が形成される。図1は、Fluorescent Diacetate (FD)を培養液中に加えた時の小型肝細胞コロニーにおけるFDの取り込みと代謝・排泄を見たものである。FDは、細胞内に容易に取り込まれ細胞質のesteraseにより代謝されると蛍光色素であるFluorescenceができ、Mrp2を介して毛細胆管に排泄される。 そのため、形成された毛細胆管が蛍光で染まる。図1左上で見られるコロニーは、大部分を小型の細胞が占め、左下に嚢胞状構造を持つ組織化した部分を持っている。左下図で示すように小型の細胞の部分はerastaseを持たずFDを代謝できないため染まらない。嚢胞状構造の部分に組織化された細胞により排泄されたFluoresceinが蓄積している。上中のコロニーは大型化し始めた細胞からなるコロニーで細胞質内にesteraseが有りFDを代謝はできるが、アピカル面(毛細胆管面)の形成がないために排泄できず、細胞質内に蓄積している。右上のコロニーは成熟化した小型肝細胞からなり、コロニー内に毛細胆管網が形成されている。排泄されたFluoresceinによって毛細胆管が線香花火状に光っている。FDの代謝排泄を有するか否かは、肝前駆細胞が成熟化し、生体内と同様な細胞膜の極性が形成されているかどうかを検定する指標となる。

図1

図1. 各分化段階にある小型肝細胞の Fluorescent Diacetate (FD)の代謝・排泄能を見たものである。Fluorescent Diacetate (FD)は、細胞内に容易に取り込まれ、細胞質内のesteraseにより代謝されると蛍光色素であるFluorescenceができ、MRP2を介して毛細胆管に排泄される。

成熟化した小型肝細胞は、細胞膜の3つのドメイン、Sinusoidal domain(類洞面)、Lateral domain(側面)、Apical domain (bile canalicular domain;毛細胆管面)が明瞭に区分され、それぞれの膜面に局在するTransporterが発現する

図2

図2. Matrigelにより成熟化誘導を受けた小型肝細胞の培養経過に伴うトランスポーターの発現。Matrigel投与後、培養経過に伴いトランスポーターが発現してくる。
(Oshima H et al. J Cell Biochem, 2008)

毛細胆管の形成はまた、毛細胆管面に局在するタンパク質を染色することによっても見ることができる。

よく用いられるタンパク質として、

  • Multidrug resistance-related protein 2 (MRP2)
  • Dipeptidyl peptidase IV (DPPIV)
  • ectoATPase
  • 5’-nucleotidase (5NT)
  • Actin
  • ZO-1(Tight junctional protein)

がある。

図3

図3. 毛細胆管面に局在するタンパク質を同定するために蛍光免疫染色を行った。Apical domainタンパク質であるectoATPase, MRP2, 5NTを緑色で、actinを赤色で染めている。核をDAPI(青色)で染めている。

形成された毛細胆管は、一方向性に物質を運搬するように大小の蠕動運動を行っている。図4は、その運動をタイムラプスで撮影したものである。

図4

図4. タイムラプスで撮影した。20秒ごとに2時間撮影している。
(Sudo R et al. Ann Biomed Eng, 2005)

毛細胆管の運動の動画

  1. Mitaka T, Sato F, Mizuguchi T, Yokono T, Mochizuki Y. Reconstruction of hepatic organoid by rat small hepatocytes and hepatic nonparenchymal cells. Hepatology, 29(1), 111-125 (1999) 
  2. Sudo R, Ikeda S, Sugimoto S, Harada K, Hirata K, Tanishita K, Mochizuki Y, Mitaka T. Bile canalicular formation in hepatic organoid reconstructed by rat small hepatocytes and nonparenchymal cells. J Cell Physiol, 199(2), 252-261 (2004)
  3. Sudo R, Kohara H, Mitaka T, Ikeda M, Tanishita K. Coordinated movement of bile canalicular networks reconstructed by rat small hepatocytes. Annals of Biomedical Engineering (Ann Biomed Eng), 33(5), 696-708 (2005)
  4. Oshima H, Kon J, Ooe H, Hirata K, Mitaka T. Functional Expression of Organic Anion Transporters in Hepatic Organoids Reconstructed by Rat Small Hepatocytes.  J Cell Biochem, 104(1), 68-81 (2008)