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(1)正常ラット肝小葉構造

肝小葉は、中心静脈を中心にグリソン鞘(Glisson sheath)が六角形の頂点に配置するような構造を呈している。肝細胞は、グリソン鞘周囲の限界板(Limiting plates)と呼ばれる肝細胞から中心静脈に向かい1,2細胞の厚さで二十数個細胞が並んだ肝細胞索(Liver plate)を形成している。索と索の間には類洞(Sinusoid)が存在し、門脈と肝動脈からの血液が中心静脈に向かって流れる。肝細胞間には毛細胆管が形成され、分泌された胆汁を小葉間胆管に向かって運搬する。

図1. 肝小葉構造模式図

類洞は、小孔(fenestration)を有する一層の内皮細胞で作られている。類洞内皮細胞(Sinusoidal endothelial cells; SECs)と肝細胞の間にはディッセ腔(Space of Disse)と呼ばれる隙間がある。類洞内には、クッパ-(Kupffer)細胞やピット(Pit; Natural killer cell)細胞が常在し、ディッセ腔には、星(Stellate;伊東)細胞が常在する。肝細胞や類洞内皮細胞には基底膜が存在せず、代わりに4型コラーゲンやラミニンなどの細胞外基質がディッセ腔内に薄く存在している。肝細胞は、類洞に面する細胞膜が基底膜面(basal domain)又は類洞面(sinusoidal domain)と呼ばれ、毛細胆管を形成している細胞膜が毛細胆管面(bile canalicular domain)又は頂点面(apical domain)であり、細胞接着面が側面(lateral domain)である。栄養物質や代謝産物の出入は類洞面から胆汁成分の分泌は毛細胆管面から行われる。

図2. 肝細胞策と類洞の模式図

図3. 毛細胆管と小葉間胆管を結ぶヘリング管

肝細胞が索状に配列し、細胞間には毛細胆管が形成され、肝細胞索に沿って毛細血管が存在する。このような複雑な組織体をIn vitroで作ることは可能であろうか?
我々は、小型肝細胞と非実質細胞との共培養、また胆管上皮細胞によって再構築される胆管を組み合わせることにより、高い肝細胞機能を持つ類肝組織の形成を目指している。

  1. 泉井 亨、金田研司。カラー図解 人体の正常構造と機能 IV肝・胆・膵。日本医事新報社、2001年